レモンフロストの腫瘍に関する情報 2020.5.29更新

レモンフロストの腫瘍問題は、2017年8月29日にJohn Scarbrough氏により投稿された衝撃的な3枚の写真と共に露見しました。

John Scarbrough氏の投稿より出典

1.John氏の所有する二匹のメスのレモンフロストに腫瘍が発生した点
2.John氏と同様に腫瘍を発生したレモンフロストの報告がある点

この2点が大きな情報でした。

今日までこの投稿を発端として、世界中のブリーダーにより大きな議論が巻き起こる中で

・レモンフロストの作出者であるThe Gourmet Rodent

・最初にレモンフロストの販売権を持ったGeckos Etc.のSteve Sykes氏

・腫瘍問題を露見させたGeckoBoaのJohn Scarbrough氏

最初に、中心となったこの3者による情報とアカデミックな根拠に基づいたを情報を時系列順に追って行きます。

続いて、レモンフロストの特性やブリーダーの試行、本モルフを取り巻く現状についても解説を行います。


本記事は、従来の書籍では敬遠されがちなレモンフロストにおける腫瘍問題の情報を明らかにし、このモルフが持つ魅力的な表現のみにスポットをあてるのではなく、付随する障害についても正しい認知を広める事を目的としています。

その為、内容は商業ベースにおける一部の販売業者への配慮が行われませんが、多くの飼育者が本モルフを正しく認知することを望みます。


又、中国の一部で、レモンフロストに対する処置方法(素人による外科的手術等)をまとめ、腫瘍発症時の対策を行っている事は把握しておりますが、動物の管理及び販売に10年以上従事してきた個人として、きちんとした免許や知識を持たない素人が、独断で動物にメスを入れることは到底信じらない行為である為、本記事では触れません。

この記事をお読みになった方の中で、レモンフロストを飼育し腫瘍問題に悩む方がいらっしゃった場合には、必ず専門の獣医師の指導に従って頂くようお願いします。

又、動物の愛護及び管理に関する法律第六章第四十四条2の項において罰則が設けられており、疾病にかかった愛護動物に適切な処置を行うことは義務付けられています。

Source1:動物愛護管理法の概要

Source2:動物の愛護及び管理に関する法律


[はじめに]

本記事は2017年10月10日より執筆を始め、更新を重ねています。

この大きな問題が露見したレモンフロストについては、非常に美しい表現が多くのブリーダーを魅了し、エニグマの神経障害に対して初期に行われたアプローチと同様、腫瘍問題の切り離しを夢見た試行が繰り返されています。

しかしながら、試行のn数が増える中で腫瘍発生の報告も増え続け、この腫瘍問題はレモンフロストに紐付く障害であると自然に理解されるようになりました。

現在では当初掲げられた「腫瘍問題の完全な切り離し」という目標からは逸れ「選別交配により発症率を下げる」という、エニグマと同様の目標に落ち着いています。


このモルフの繁殖継続を目指すブリーダー達によって試行が続く中、2020年3月31日に公開されたアカデミックな論文では厳しい結論がなされています。

直訳すると

「虹色細胞腫とゲノムの間に考えられる関連性から、この病変の原因が完全に解明され、記述されるまでは、レモンフロストの更なる交配は推奨されない。」

という内容です。

レオパにおいて何らかの障害を抱えるモルフは決して少なくありませんが、アカデミックな観点から繁殖行為そのものを否定する意見が出たのは初めてのことです。

この論文が掲載されたのは、ネイチャー・リサーチ社によるScientific Reportsというオンラインの学術雑誌です。このScientific Reportsは論文のインパクトではなく、科学的正当性のみを評価することを目的としています。

このような学術誌において、繁殖を否定する意見が掲載された以上、趣味としてこの種類を楽しむ程度の我々一飼育者が取り扱うべきモルフでは無いと考えます。

この論文については後述しますが、いくつかの病理報告書も含め、専門的な立場にある方々よりレモンフロストの繁殖について否定的なエビデンスが示される中、繁殖について肯定的なエビデンスは現在までに示されておりません。


上記を理由に2020年5月29日時点(最終更新日)において、本記事ではレモンフロストの繁殖は否定的であるという立場から、解説を行います。

尚、立場とは関係なく「科学的な根拠に基づく情報」の全てを記載し、繁殖継続に向けた肯定的なエビデンスが示された場合には、積極的な解説を行います。

以上を踏まえた上で、お読みいただければ幸いです。


[時系列順の情報]

John Scarbrough氏 - 2017年8月29日

1.所有する2匹のメスのレモンフロストに腫瘍が発生した。

2.同様に、レモンフロストを飼育するブリーダーの中で腫瘍発生を確認している。

Source1:John Scarbrough氏による原文


Steve Sykes氏 - 2017年8月30日

1.腫瘍問題に関してThe Gourmet Rodentと2017年1月下旬まで情報の共有は無かった(Steve氏は2015年10月にTGRより購入)。

2.現在までに所有するレモンフロストに「白い斑点」※は出たが、腫瘍にまで成長した個体は居ない。

3.「白い斑点」が出現した個体に関して、絶対に繁殖のラインに組み込んでいない。

4.2017年の繁殖プロジェクトでは「白い斑点」を取り除くことを目標としている。

※後の病理解剖において、白い斑点と腫瘍は同じ虹色細胞腫である事が判明します。

以下、Steve Sykes氏による原文
"Thanks John for creating this thread. Here is my understanding of the spots/benign tumors:
We have not brought this issue to the gecko community because it isn’t pervasive in our collection. We have not announced this publicly but have discussed this to anyone who has asked us about this. We were surprised by this in late January 2017 when it was brought to our attention by a customer that noticed it on his gecko. Immediately, we evaluated our collection and are continuing observations. We observed a low percentage of 2016 hatched LF to show these raised spots, and even fewer numbers in our 2017 babies. No LF with these spot issues are showing any signs of being sick or stressed and none of these LF in our collection have died at our facility. And as is our commitment and our standard practice, any animal showing any issue is isolated and has never been offered for sale or bred.
So how did the LF morph all start? In October 2015, I won the LF at an auction from Gourmet Rodent. I brought home Ms. Frosty in October 2015 and in December 2015 I brought home Mr. Frosty. Mr. Frosty hatched in 2015 and when we received him we noticed no tumor spots (nothing appeared out of the ordinary). He does have some intense white spots (not raised) which seem to be normal for LF. When we first heard of these raised spots, we checked him extensively and found one very small, slightly raised spot on his side that we have been monitoring. Since January 2017, it has not changed in size or shape. Ms. Frosty hatched in 2015. She never exhibited any white spots. She has since died due to a parasite issue she had when I received her. She was never bred. Gourmet Rodent never shared any information with me about the white spots until I brought it to their attention in late Jan 2017. At that time, they told me they had just recently seen this as well and were investigating it as well.
No spots or tumorous growths were visible on any LF animals sold in 2016, and I continue to only sell LF within healthy parameters at all times that show no issues.
We structured our 2017 breeding projects with animals showing no raised spots and there is a significant reduction in raised spots observed on this year’s production. We are feeling confident that our breeding projects can continue to bring down and hopefully eliminate the incidence of these raised spots.
I am still super excited about the LF and all of the fabulous combination morphs that we have been hatching, and the exciting directions that this gene can be taken. The animals are spectacular and it is a daily joy for me to watch the 2017 hatchlings as they grow. As is the case with any new morph, there are things that need to be determined and figured out. We are pioneers and working on it daily to bring this morph to perfection!"


The Gourmet Rodent - 2017年8月30日

1.レモンフロストに発生する皮ふ上の腫瘍について知っていた。

2.獣医師の検査結果より色素細胞腫であると判明している。※1

3.スーパー体の個体から高確率で腫瘍を確認していた為、リリースをしなかった。

4.原因は単一の個体からレモンフロストを固定する為に行った過度なインブリードである。

5.アウトクロスでこの問題は切り離しが可能である。※2

6.私達の販売したレモンフロストに問題が起きた場合は、一緒に解決策を考えます。※3

※1 現在までに、診断書の提示等はありません。

※2 現在では、この説は否定されています。

※3 日本に販売されたTGR産のレモンフロストの内、腫瘍が発生した個体が居ましたが補償対応は一切無かった事を確認しています。

Source1:The Gourmet Rodentによる原文


John Scarbrough氏 - 2017年9月23日

1.3世代にわたるアウトクロスを行ったが、問題は解決していない。

2.シブリング個体において腫瘍は確認出来ず、問題が独立している可能性は考え難い。

3.腫瘍は皮ふ上のみでなく、肝臓と腎臓への転移を確認している。

4.腫瘍原因による死亡例の報告も出ており、悪性であると考える。

Source1:3.について、John Scarbrough氏による原文


John Scarbrough氏依頼のフロリダ大学獣医医療センターの病理医 - 2017年9月23日

1.皮膚上の白色を形成する細胞は虹色細胞である。

2.虹色細胞が多い程、目の中の白の濃度が高くなる。

3.レモンフロストが虹色細胞の不均衡を高め、腫瘍を引き起こす可能性が高いと仮説している。

以下、John Scarbrough氏が病理医と話した内容
"I would also mention that the pathologist hypothesizes that the morph causes an heightened imbalance of iridophore cells and this cell imbalance is likely what causes the tumors. One other interesting point that he mentioned was that the higher levels of iridophore cells can lead to higher concentrations of white in the eyes."


John Scarbrough氏依頼のフロリダ大学獣医医療センターの病理医 - 2017年10月3日

1.John氏提供のメス個体に皮ふ上に腫瘍を確認、肺と肝臓に細胞の凝集体を確認した。

2.Don氏提供のオス個体に器官、肺、肝臓、腎臓、脂肪体及び皮ふ上に腫瘍を確認した。

3.この事から転移性のある悪性腫瘍である。

4.レモンフロストの腫瘍は虹色細胞腫であり、これはTGRの発表の通り色素細胞腫である。

5.後日、きちんとした臨床結果を発表する。

Source1:病理医よりJohn Scarbrough氏へ宛てられた原文


John Scarbrough氏依頼のフロリダ大学獣医医療センターの病理医 - 2017年11月14日

[レモンフロストについて]

このモルフが白く見える理由は、虹色細胞内に結晶を持ち偏光下で屈折により白く輝いているからである。

虹色細胞腫は爬虫類全体では珍しい診断結果ではないが、腫瘍が先天性で遺伝する疑いがある性質は非常に珍しい。

又、この種類の腫瘍は分化した細胞が未分化の状態に戻り、その結果として結晶を失う場合が多い。

しかし、レモンフロストに発生する腫瘍は、細胞の全てが結晶を持ち続ける特性を持つ。

虹色細胞を発生させるこの遺伝子は、腫瘍発生の傾向を高める可能性がある。

子孫の腫瘍発生率が高かった場合、レモンフロストの繁殖は推奨されない。


[レモンフロストへの医学的診断]

1.レモンフロストは成熟につれて最大で95%以上の個体が皮ふ上に白い腫瘍を形成する。

2.虹色細胞腫は転移性があり、悪性の腫瘍(癌)である。

3.皮ふ上に虹色細胞腫を形成、転移先の内臓に肉芽腫を形成する。


[John Scarbrough氏提供のメス個体について]

最終的な処置:安楽死

腫瘍・凝集体を確認した箇所:皮ふ、肺、肝臓、膵臓、瞼、手足、尾

診断内容

1.最大の虹色細胞腫は肛門周囲の皮ふにあり、周囲への拡大を認めた。

2.手足、及び尾の皮ふには、初期の虹色細胞の凝集体を確認した。

3.小さな虹色細胞腫は肺の中にも存在し、転移性が極めて高いことを証明している。

4.安楽死の際、体調は良好であった。

5.時間経過による内臓への腫瘍の転移は、正常な機能を失うことから安楽死を行った。


[Don Hamilton氏提供のオス個体について]

最終的な処置:安楽死

腫瘍・凝集体を確認した箇所:皮ふ、肺、肝臓、腎臓、体脂肪、精巣及び睾丸、瞼

診断内容

1.最大の虹色細胞腫は右眼周囲の皮ふ、顎、器官にあり、周囲への拡大を認めた。

2.John Scarbrough氏提供の個体と比べ、病状はより進行していた。

3.全身に腫瘍が存在していた。

4.安楽死の際、痩せた状態にあった。

5.多数の腫瘍以外に感染症、炎症、代謝の問題は確認されず、痩せている状態の原因は腫瘍である可能性が高い。

Source1:病理医による病理報告書の全文


Steve Sykes氏 - 2017年12月1日

Northwest Zoopathのkeith benson博士に協力を依頼した。

1.人道的に、腫瘍の発生した8匹のレモンフロストを安楽死させた。

2.安楽死の際、虹色細胞腫を除き全ての個体の体調は良好であった。

3.腫瘍発生には個体差があり、これは腫瘍を発生しなかった個体での繁殖により、その発生を低減できる突然変異であると考えられる。※1

4.腫瘍を発生させた個体は、繁殖のラインからは外すべきである。

5.8匹の腫瘍は痛みを伴うものではなく、正常な行動や摂食の障害とはならなかった。

6.レモンフロストのこの問題の調査はまだ始まったばかりで、より多くの研究を必要とする。

7.レモンフロストの何%が腫瘍を発生させているのかを知る必要がある。

8.この腫瘍に関する複数の逸話はデータではなく、根拠がない推測には価値が無い。※2

※1 この頃から、腫瘍問題の完全な切り離し論から発生率の低減論に目標が変更されていきました。

※2 後述しますが、この発言はJohn Scarbrough氏により強く批判されました。

Source1:Steve Sykes氏による原文


John Scarbrough氏 - 2017年12月1日(Steve Sykes氏に対して)

1.レモンフロストに発生する色素細胞腫は明らかに広範囲に転移していく。

2.病理的解剖を行った♀個体は、小さな腫瘍や凝集体を除き完全な健康状態にあるように思えたが、肺と肝臓に転移を認めた。

3.アウトクロスを行ったレモンフロストであっても、腫瘍を現している。これをただの不運だと言うのか?

4.あなたの発言こそが逸話であり、利益を得ようとする行為である(Steve氏は2017年1月にはこの問題を認識しながら、この情報を隠匿し続けレモンフロストの販売を行った背景があります)。

Source1:John Scarbrough氏による原文(コメント欄にて、非常に怒っている様子が伺えます。)


Steve Sykes氏依頼のNorthwest ZooPath:Keith Benson博士の報告 - 2017年12月1

[Steve Sykes氏提供の8個体について]

最終的な処置:安楽死(全個体)

個体の情報 :オス・メス(生後半年~1年程)

腫瘍・凝集体を確認した箇所:虹彩、聴覚口、顎の下、背中、骨盤の下、腋窩部(ワキの下)

[各個体の診断内容要点]

1.今回の病理解剖の中で、腫瘍の転移性について説得力のある証拠は得られなかった。

2.しかし、レモンフロストの遺伝子を要因として腫瘍が発生している可能性を考慮する必要はある。

3.腫瘍は多中心性である(1つの臓器に複数の腫瘍が発生し、再発性が高い)。

4.腫瘍の完全な切除にはマージン(腫瘍を囲む正常な細胞)が必要であり、これらの腫瘍では十分なマージンが確保出来ず完全な切除を保証出来ない。

個体番号16-3654について:報告1 報告2

個体番号17-961について:報告1 報告2

個体番号16-5055について:報告1 報告2

個体番号16-6158について:報告1 報告2

個体番号16-5933について:報告1 報告2

個体番号16-4603について:報告1 報告2


John Scarbrough氏(問い合わせた情報) - 2017年12月4日

実際に意見交換を行う為、John Scarbrough氏へ直接問い合わせました。

会話内容から抜粋して紹介します。

上の写真は中国のブリーダーが飼育していたレモンフロストです。

切除手術を行ったものの完全な切除には至らず、残念ながら既に死亡しています。

又、上の写真のように一部の色素が濃くなっているだけの個体でも、冒頭の写真のようにこぶ状に隆起している個体でも危険性は変わらず、腫瘍は近辺の細胞に広がり健康な組織を侵食し、内臓へと転移して正常な機能を失わせます。

この特異な性質をもつ、通常と異なる虹色細胞を発生させるモルフがレモンフロストであると仮説しています。


John Scarbrough氏 - 2017年12月4日

レモンフロストの取り扱いを完全に停止し、全ての個体は研究の為に大学へ寄贈されました。

Source1:John Scarbrough氏による原文


ヴロツワフ環境生命科学大学獣医学部 - 2020年3月31日

レモンフロストの腫瘍について、ネイチャー・リサーチ社によるScientific Reportsというオンラインの学術雑誌にて論文を掲載しています。

この論文は、学術的な観点からレモンフロストに触れた初めての論文です。

冒頭で紹介した「虹色細胞腫とゲノムの間に考えられる関連性から、この病変の原因が完全に解明され、記述されるまでは、レモンフロストの更なる交配は推奨されない。」という結論の他に、ペット流通が盛んであるにも関わらずゲノム解析等の科学的なアプローチが行われていない点や、そのことからモルフ名は商業名でありどのような染色体異常かは全く判明していない点等、現時点までに行われた腫瘍問題解決を目指した検証には科学的な観点があまりにも欠如していると記述され、商業的な試行に対する痛烈な皮肉を感じます。

中でも興味深い記述として「皮ふ上に発生した腫瘍の切除は処置として有効であり当該部位での再発は見られなかったが、別の部位において腫瘍を発生させた。」という内容があり、これまで仮説されていた通り、虹色細胞そのものが腫瘍発生の原因である可能性を示唆します。

論文である為、内容の全訳掲載は控えます。英語が苦手な方であっても翻訳サイトを活用するだけでも十分に読める内容ですので各自お願いします。

Source1:Iridophoroma associated with the Lemon Frost colour morph of the leopard gecko

おススメの翻訳サイト:DeepL翻訳

以下、論文内での結論
"In view of a putative connection between iridophoromas and the genome, further breeding of the Lemon Frost leopard gecko line is not recommended until the pathogenesis of the lesions will be fully recognised and described."

[3者による対応の現在

本項では、時系列順の列挙が難しい情報に関して紹介していきます。

レモンフロストの腫瘍発生時の顧客への対応

〔Geckos Etc.〕 

腫瘍が発生した個体の写真を撮影し、Steve Sykes氏へ連絡を行う必要があります。

補償対象は隆起する程大きな腫瘍を形成した個体に限られます。

その上で腫瘍と判断された場合は、当該のレモンフロストの販売金額と同額のレオパを補填する形での対応が日本国内で行われました。

尚、現在では公式HPから販売ページは削除されており、大々的な販売は行われていません。


〔The Gourmet Rodent〕

インフォメーションでは対応を行うと発表しておりましたが、実例は確認出来ませんでした。

初期ロットを購入(TGRと直接取引)した国内の飼育者の飼育個体が、腫瘍を発生させた際に相談を行いましたが、補償対応は無かったことを確認しています。


本問題における各ブリーダーのスタンス

〔The Gourmet Rodent〕

現在、レモンフロストは腫瘍が発生する問題があると認めています。

レモンフロスト対して様々な試行がなされる中、最初のコメント以降は本件について全く触れず口を閉ざしたままです。  

世界で初めて誕生した二匹のレモンフロストの内、メス個体の死亡時期と理由が明らかにされていない点から、インブリードとは関係なく最初から腫瘍が出ていたのではないか等の憶測が飛び交う中、無言を貫いている為に真実はわかりません。 

又、TGRは一部の販売業者には事前に腫瘍問題を伝え、販売を控えていた事実も確認しています。一方で、殆どのブリーダーや業者に対しては腫瘍問題を隠匿しながら1匹$2,500という価格で大量に販売を行いました。

古参の超大手爬虫類ブリーダーでありながら、あまりにも酷いこの販売方法については、世界中から非難の声が集まりました。


〔Geckos Etc. - Steve Sykes氏〕

現在、レモンフロストは腫瘍が発生する問題があると認めています。

単純なカラーモルフとして捉えずに、腫瘍問題の解決を目指すブリードを行うと明言しておりましたが、2019年にはレモンフロストの販売ページは削除され、インフォメーションもトップページの案内からは削除されました(記事内容は残されています)。

2020年現在、このプロジェクトについての声明はありません。

余談ではありますが、John Scarbough氏が腫瘍問題を公表したタイミングは、Steve Sykes氏が二度目にレモンフロストを販売しようとHPに大量アップした直後であり、世界中からの批判が集まる中で販売の停止を余儀なくされました。その為、上記のプロジェクトが本心であったのか、ひとまずの建前であったのかは不明です。

腫瘍問題の露見後にHP上でのレモンフロストの販売は取りやめたものの、各地の即売会では販売を行っており、どうにも二枚舌感は否めません。

上記の通りSteve Sykes氏は腫瘍問題を認知しながら、隠匿し、販売を行ったことは事実です。しかしながら、同氏もまたTGRにより腫瘍問題を隠匿された状態で$10,000(当時のレートで120万円)で購入している被害者の一人であることも事実で、同情の余地はあります。

腫瘍問題を公表せずに販売した飼育者に対して、腫瘍発生時には補償対応を行いました。

Source1:Steve Sykes氏によるLemon Frostの解説

Source2:Steve Sykes氏によるSuper Lemon Frostの解説


〔GeckoBoa Reptiles - John Scarbrough氏

TGRとSteve Sykes氏による腫瘍問題隠匿の被害者の1人であり、レモンフロストの販売は行っていません。

現在、レモンフロストにより腫瘍が引き起こされると明言しています。

腫瘍が発生しないレモンフロストを作出する過程で生じる「安楽死以外の選択肢がない腫瘍を持つ個体をどうするのか?」という倫理的な観点より、ブリードから完全に撤退しています。

又、腫瘍は虹色細胞が原因であるという仮説から「腫瘍抑制には虹色細胞を減らす必要があり、その結果として固有の色素胞を限りなく薄めたレモンフロストに意味はあるのか?」という部分にも言及しています。

余談ではありますが、氏は以前より一貫してレオパードゲッコーのQOL(Quality of Life)を重要視しており、神経障害の切り離しが不可能であったエニグマや眼球収縮及び不妊問題の切り離しが不可能であったNDBEも、レモンフロストと同じく取扱いを停止しています。

当時の質疑応答からも、商業ブリーダーでありながら高い倫理観を持ち、命としてのレオパードゲッコーを考えている事が伺えます。

以下、John Scarbrough氏によるレモンフロストの扱いに対する回答
"As far as the geckos I already have, I will take the same approach and philosophy I have always taken. It will be solely based on quality of life and the animal first. If the geckos are in pain and suffering they will be humanly euthanized. As we now know, the tumors affect internal organs as well and there is likely no treatment. Until that point, I will keep them or adopt them out to good homes with full disclosure. Some may never develop tumors and may live long happy lives."

[ブリーダーの試行から明らかになった事]

もう一度

前述の通り、商業ブリーダーによる「検証」には科学的な見地が圧倒的に不足している状況であり、科学的な根拠に基づいた論文や病理報告書等と同等のエビデンスとして扱うことは出来ません。

現時点までに2020年3月31日に公開された、アカデミックな観点からレモンフロストを捉えた論文に勝る検証は存在せず、相反する意見の全てはデータ化の行われていない経験談に過ぎません。

当該の論文と病理医達による報告書のみがレモンフロストを評価する為の根拠であり、ブリーダーによる多くの試行結果は、このモルフを肯定ありき、若しくは否定ありきの「憶測」に過ぎないと十分に理解する必要があります。

以上を踏まえた上で、本項では腫瘍問題の解決やレモンフロストの特性を検証しようと試行したブリーダーによる見解等を紹介していきます。


レモンフロストブリーダーへの聞き取り

海外のブリーダーへの聞き取りを重ねる中で

① こちらから「○○ではないですか?」と聞かずに、向こうから自然に得られた見解

② ①の内、情報源を別として複数回得られた見解

を中心に紹介していきます。

又、実際の話をする中で同時に彼らが商業ベースのブリーダーである事から、彼らから提供された写真及び個人名の公表の許諾は得られなかった為、複数の見解のすり合わせという形で紹介させて頂くことをご了承ください。


1.危険な交配例の発見

何度もしつこいようですが、レモンフロストにおける腫瘍の発生条件は解明されていません。

その為、現状全てのレモンフロストは腫瘍発生の可能性を抱えており、そもそも交配に用いること自体が危険な状態です。

その中でも、ブリーダーへの聞き取りから得られた、更に危険度が高い交配例を紹介します。

ⅰ.タンジェリンとの交配

Dominika Allen氏の腫瘍報告より出典

この見解は、腫瘍問題の露見直後より多くのブリーダーから得ることが出来ました。

意見を総括すると、タンジェリンに限定された話ではなく「何らかの形で、ノーマルの個体と比較して白や黄色が強く表現される個体」に対し、レモンフロストを組み合わせる事で腫瘍発生の確立を高めると考えられています。

実際にSteve Sykes氏の手元で最初期に腫瘍を発生させた8匹のレモンフロストの全ては、ハイポタンジェリンとの交配から生まれており、その他でも数多くの症例が確認出来ます。


ⅱ.レモンフロストとしての特徴を強く引き出す交配

Henry Breitmeier氏による腫瘍報告より出典

この見解は、腫瘍問題露見直後より多くのブリーダーから得ることが出来ました。

最初期に公開されたレモンフロストのような

・ベタ塗りしたような白地

・真っ白な虹彩

と言ったこのモルフの魅力の根幹にはデメリットがあり「特徴が出ている = 虹色細胞の量が多い」と推察出来ます。

レモンフロスト独自の発色(虹色細胞)が強ければ強いほど、腫瘍発生の確立を高めると考えられています。

逆説的に、この虹色細胞の量が少ないレモンフロストを選別交配することが、安全な交配パターンの模索であるとも考えられますが、この交配はJohn Scarbrough氏も提言する通り

「特徴である虹色細胞の量を可能な限り減らした結果、それはレモンフロストなのか?」

という問題を抱えます。


ⅲ.ホモ接合体(スーパーレモンフロスト)の作出

BMT Reptile Groupによる腫瘍報告より出典

この見解は、腫瘍問題露見直後に作出元であるTGRからも警鐘が鳴らされ、幾人かのブリーダーによる試行も全て失敗に終わっていることが確認出来ます。

現在、スーパーレモンフロストは最も危険な交配パターンとされており、問題は以下の通りです。

・異常な確立で腫瘍が発生する。

・全体の皮ふは分厚くなり、特に顔周りが顕著である。

・顔は短くなり、巨眼の個体が発生する。

当初から危険な交配であることは明らかにされており、試行したブリーダーは少ないです。継続的にスーパーレモンフロストの作出を行ったブリーダーの1人から

「多くはヤングサイズまでに腫瘍が発生し、死んでしまうケースも多く、完品のフルアダルトが作出出来ない。」

という衝撃的な回答も得ています。

前述の回答をしたブリーダーではありませんが、上の写真のスーパーレモンフロストを作出したBMT Reptile Groupは「この個体は盲目であるように振る舞い、鼻腔内は腫瘍により閉塞し、開口呼吸を行わないとまともに息が出来ないように見える。」という内容と共に、スーパーレモンフロストを作出した事に対する後悔と、繁殖の停止を求めています。

スーパーレモンフロストについては衝撃的な写真が多い為、閲覧される方の中に苦手な方もいらっしゃる事を配慮し、その他の写真は別記事にて掲載します。

Source1:BMT Reptile Groupによる腫瘍報告の原文

Source2:スーパーレモンフロストの写真(閲覧注意)


ⅳ.スーパーマックスノー+スーパーレモンフロストの亜致死の可能性

この見解は、3人のブリーダーより得ることが出来ました。

前述の通り、そもそもレモンフロストのホモ接合体であるスーパーレモンフロストそのものが危険であることは明白であり、この試行は推奨されません。

その上で得られた共通の体験談を紹介しますが

「スーパーマックスノースーパーレモンフロストのベビーと思われる個体が、ハッチから1週間以内で死んでしまった」

という内容でした。

外見的には腫瘍が確認出来なかったにも関わらず、孵化後間もなく死亡している点から、このコンボは亜致死遺伝である可能性があり、避けるべき交配例であると考えられます。

3個体とも全て既に死亡してしまっている為、それぞれ片方がホモ接合体である個体を紹介していきます。

マックスノー+スーパーレモンフロストの個体

マックスノーとレモンフロスト両方の表現をしています。

前述の通り、顔面の皮ふが分厚くなり若干歪んでいることが分かります。

スーパーマックスノー+レモンフロストの個体

レモンフロストの表現を殆ど残しません。

このコンボの個体は見かける機会が比較的多いですが、どの個体も体の一部分にレモンフロスト特有の発色を残すのみとなり、ほぼスーパーマックスノーの外見となります。

レモンフロストの表現がスーパーマックスノーの表現により完全に隠され、気づかない内にレモンフロストの繁殖を行ってしまう危険性があります。


2.安全な交配例の模索

誤解なく冒頭の文言を伝える為に、何度も何度も説明しますが、このモルフの繁殖についてはいくつかの科学的な根拠に基づいた報告がなされる中で、現状その全てが繁殖に否定的な結論を出しています。

確実に安全が保障された交配は発見されておらず、以下で紹介する見解は「比較的腫瘍発生率が低い」という点で安全な交配例とされ「この交配であれば大丈夫!」と繁殖を推奨する物ではありません。

レモンフロストを繁殖する行為は、前述した論文や病理報告書も示す通り推奨されず、本記事もまた繁殖については非推奨の立場をとります。

図等を多く用いている為、解説を以下の記事に分けています。

3.単純なモルフのコンボによる解決は不可能

Barry Gardner氏による腫瘍報告より出典

他のベースモルフとコンボさせ、レモンフロストの効果を薄れさせることで腫瘍発生を防ぐという考え方です。

この考えは、最初期からあまり多くのブリーダーに支持はされませんでしたが、目にする機会が多い為に注意喚起として紹介します。

現在までにレモンフロストとコンボをさせたベースモルフの中で

エクリプス、エニグマ、GEM(TUG)スノー、トレンパーアルビノ、ブリザード、ベルアルビノ、W&Y、マックスノー、マーフィーパターンレス、レインウォーターアルビノ

上記のモルフで腫瘍を発生させた個体が報告されています。

その他のベースモルフとのコンボの結果は待たれますが、前述の通り主流の考え方では無い為にあまり試行は進んでいません。

この中でスノー系との交配については一定の効果があるようで、その内容については2.安全な交配例の模索にて取り扱っています。

この考え方を支持する者は「ある特定の組み合わせで腫瘍発生を確認していない。」と説明した上で販売に繋げる商業ブリーダーである場合が多く、これはエニグマの登場初期に見られた「神経障害の出にくい(出ない)血統のエニグマ」という販売文句と酷似しており、自身のレモンフロストをブランディングする行為に過ぎないとの警鐘が鳴らされています。

何度も述べている通り、腫瘍発生のメカニズムは明らかになっておらず、完全に腫瘍問題の危険性が無いレモンフロストは存在しません。

実際に、黒色色素を欠乏させ色を薄くするはずのアルビノですら、上の写真のように腫瘍報告はなされています。


[爬虫類における虹色細胞腫]

本項では、レモンフロストにおける色素細胞腫に限らず、爬虫類全体における色素細胞腫について考えていきます。

学術雑誌であるJournal of Comparative Pathologyの146号にて「Melanophoromas and Iridophoromas in Reptiles」という論文が掲載されています。

この論文では爬虫類の色素細胞腫について、多種合計26体からの報告がまとめられています。報告される色素細胞腫の種類は、表題の通り黒色細胞腫と虹色細胞腫になります。

中でも爬虫類に発生した虹色細胞腫について、論文内では良性及び悪性の両報告が存在することが記述され「リンパまたは血管への浸潤および転移が確認されるかどうかが、爬虫類における悪性腫瘍の指標である」と結論しています。

又、「これらの腫瘍の潜在的な悪性度合については、臨床的に考慮されるべきであり、詳細の解明には更なる研究が必要である」とも記述されます。

同様に論文である為、内容の全訳掲載は控えます。

現在、レモンフロストに発生する虹色細胞腫については、フロリダ大学獣医医療センターの病理報告書より転移例が報告されています。レモンフロストにおける腫瘍の中で、悪性の腫瘍が存在することはこの論文からも裏付けられます。

Source1:Melanophoromas and Iridophoromas in Reptiles

Source2:フロリダ大学獣医医療センターの病理報告書


[レモンフロストについて]

The Gourmet Rodentより出典

レモンフロストの概要

レオパードゲッコーのアダルト個体は本来「虹色細胞」を持ちません。その為、通常は「虹色細胞腫」が発生することはありませんでした。

これまでに本種で確認された腫瘍の多くは「膿瘍」であり「虹色細胞腫」ではありません。

しかし、レモンフロストは虹色細胞を発生させる固有の突然変異であり、独特の発色と虹彩はその色素胞によるものです。

この腫瘍問題はレモンフロストそのものに関連している可能性が示唆されています。

腫瘍はまず皮ふ上に形成され、転移し、内臓で攻撃性の強い悪性の腫瘍を形成し、死に至らしめる可能性があります。

成熟に伴い最大で95%の個体が腫瘍を発生させるという病理報告書も存在し、固有の虹色細胞が原因である事から生涯を通じて腫瘍発生のリスクに曝されます。

Source1:腫瘍を発生させた個体の写真(閲覧注意)


繁殖における検証点

レモンフロストについては、何度も記述したようにヴロツワフ環境生命科学大学獣医学部から公開された論文により、アカデミックな観点から繁殖は推奨されません。

科学的根拠に基づいた繁殖継続に向けた方向性等が示されない限り、専門家でもない趣味人が行う繁殖は検証と呼ぶ事すら出来ないと考えます。

このモルフの継続に必要な事は感情論や経験則に基づいた情報では無く、ゲノム解析等による腫瘍問題の原因が解明されることです。

3年近くに亘りブリーダーによる検証の効果については議論が続きましたが、これまでの試行の間に具体的な解決法が発見されなかった点、アカデミックな発表から繁殖が否定された点から、何度も記す通り本ブログにおいては「検証目的であっても繁殖は非推奨」と結論します。

これまでの間、ブリーダーにより最も重要視されていた検証点は

1.レモンフロストは虹色細胞を腫瘍化する遺伝子であり、切り離すことは出来ない。

2.レモンフロストは虹色細胞を腫瘍化する別遺伝子を含み、切り離すことが出来る。

1と2のどちらであるかです。

明確な根拠はありませんが、エニグマの経験から多くのブリーダーは1として捉えています。

仮に2であった場合、腫瘍化の遺伝子は独立しているということであり、切り離しが可能であるという明るい話題と同時に、レモンフロストと交配が行われた血統の個体の全ては不必要に腫瘍化のリスクを抱えるという非常に影響の大きい問題を発生させます。

いずれにせよ、科学的な根拠に基づいていない現在の試行の方向性は「選別交配により腫瘍発生率の低いレモンフロストを作出していくこと」であり、「腫瘍問題の完全な切り離し」という当初の目標からは逸れています。


腫瘍の致死性

Highwoods Exoticsより出典

レモンフロストに発生する腫瘍について、その致死性については議論が続いています。

これは論文や病理報告書内で、転移が確認された個体と転移が確認されなかった個体が存在することに起因します。

重要な事実は「腫瘍が内臓に転移した個体」が確認されていることであり、このことから「転移リスクの否定」は不可能です。

転移の確率については明らかでなく、幾度も記した通り、この確立については科学的な根拠に基づいたデータが示されることが待たれ、憶測に基づいた論争には意味がありません。

時系列順の解説の項においても触れておりますが、フロリダ大学獣医医療センターによる転移を確認した個体(写真の個体)の病理報告書での記述は以下の通りです。

『この個体は、検査した組織の殆どに腫瘍が存在していた。

最大の腫瘍は、右眼の周囲の皮ふ、咽頭部の気管の周囲、耳介前部の皮膚に確認出来た。虹色細胞腫は腫瘤を形成しており、周囲の組織へも浸潤していた。

前述の皮ふ腫瘤に加え、肝臓、肺、腎臓、脂肪体にも腫瘍性細胞のクラスターが存在した。

この個体は痩せた状態にあり、腫瘍の成長に伴う衰弱の結果である可能性が高い。

多数の腫瘍の存在以外に、感染性、炎症性、代謝問題の証拠は存在しなかった。

腫瘍が発生しながら問題なく生きる個体が存在する一方で、このように腫瘍の成長に伴い衰弱した個体も存在し、この違いについては明らかになっていないことを理解する必要があります。

国内飼育者による写真協力

又、内臓への転移例の他に、腫瘍の破裂例も少数確認出来ます。

上のショッキングな写真の個体は、腫瘍の発生から僅か三週間程で破裂に至りました。残念ながら、この後二週間程で死亡しています。

飼育者の方は死因特定の為、数箇所に解剖依頼を出しましたが全て断られています。その為、病理報告書等は存在しませんが、この個体については死亡理由と腫瘍が無関係であるとは考え難い状態です。

同様に、腫瘍破裂を起こし死亡した他の個体も存在する中、破裂後に外科的な治療を行い良化した個体も確認出来ます。

そのことから「破裂=死亡」の構図とはなりませんが、自然治癒は難しく適切な処置が必要であると考えられます。

この腫瘍破裂についても、腫瘍の転移性同様、科学的な根拠に基づいたデータが示されることが待たれます。

Source1:内臓転移した個体の病理報告書の全文


倫理的な問題点

腫瘍発生率の低いレモンフロストを完成させるまでの過程で腫瘍が発生した個体群は、獣医師による外科手術、最終的な安楽死を行う必要がある可能性があります。

又、現時点で腫瘍発生の完全な制御が行えないことからも、この状況下で新たにレモンフロストを産み出すという行為は常に倫理的な問題を抱えます。

レオパの健康を阻害し、先天的に重度の疾患を抱える可能性があり、専門家からも繁殖が非推奨とされるモルフを、一個人が新たに生み出すという行為については再考する必要があります。

この辺りの倫理に関する話題は、下記記事にて取り扱っています。

レモンフロストを取り巻く現状

日本を含め世界中で、議論ではなく論争が巻き起こっている状態にあります。

これは「このモルフの表現があまりにも特異で美しい点」「腫瘍が発生してしまった個体の外見があまりにも痛々しい点」が天秤にかけられ、是が非でもこのモルフを肯定したい側の人間と否定したい側の人間に別れてしまっているからです。

実際に、多くのブリーダーにより行われた試行の数々は、最初期に行われた一握りを除いて中立性に欠けており、肯定若しくは否定の結論ありきで行われています。

何度も前述した通り、アカデミックな観点からこのモルフの繁殖は否定されます。このような根拠の他にも、レモンフロストの繁殖を肯定し試行を続ける中で、取扱いを完全に停止したブリーダー達の経験談についても耳を傾けるべきです。

レモンフロストの繁殖を続けたブリーダーの中でも、Micha Wo氏による中止の報告は核心をついており

『最初のレモンフロストを購入した時、このモルフが癌と関係している事を知りませんでした。しかし大金をつぎ込んだ後にまもなく、癌の問題は発覚しました。

私は傷ついたプライドや傲慢の為に、レモンフロストと癌は関係ない事を証明する為、様々な組み合わせによるブリードを行いました。

繁殖した個体に癌の兆候は見られず、私は誇りや喜びの中に全ての警告を無視しました。同時に繁殖を続ける中で、私の健康に思えるレオパが癌に襲われる事に怯え続けました。

私がレオパを趣味にする理由は、偉大な動物であり、可愛い動物であるからです。この時点で我々は、レモンフロストの繁殖を中止する事を決定しました。

その間、私の所有するレモンフロストの1体が突然死亡しました。健康であると信じていましたが、内臓の癌により死亡しました。私は警告に耳を傾けなければなりませんでした。このモルフの魅力と、健康に見えた繁殖個体が私を盲目にしました。

私は、新人・ブリーダー・飼育者の全てにアドバイスをすることが出来ます。レモンフロストに誘惑されないで下さい。このモルフに価値はありません。

これはフロドと指輪のような関係です(ロード・オブ・ザ・リングに例えて)、そして、私達はこの物語の結末を知っています。』

という内容でした。

かなり会話調であった為、重要な部分を抜粋して翻訳しております。原文は下記に記載しますので、より細かいニュアンスが気になる方はお読み下さい。

私達の論争に命ある彼らを巻き込むべきでは無く、冷静にこのモルフを見つめ直し、正しい選択を模索するべきです。

Source1:Micha Wo氏による原文


[最後に]

GeckoBoaより出典

数あるベースモルフの中でも頭一つ飛びぬけた異質な魅力を持つこのモルフが、重度な障害を抱えていた事実は非常に残念なことです。

同時に、世界各地のブリーダーにより議論や試行がなされ、最終的には研究対象とまでなっていった一連の流れは、一人の飼育者として非常に興味深いものでありました。


本モルフにおける議論…と言うより論争については、学術的な観点から繁殖を否定する意見が示されたことで一つの決着をみせたように思います。

「虹色細胞腫とゲノムの間に考えられる関連性から、この病変の原因が完全に解明され、記述されるまでは、レモンフロストの更なる交配は推奨されない。」

最早このモルフは私達趣味人の手からは離れたと考えます。

繰り返しますが、現時点までに2020年3月31日に公開された、アカデミックな観点からレモンフロストを捉えた論文に勝る検証は存在せず、相反する意見の全てはデータ化の行われていない経験談に過ぎません。

当該の論文と病理医達による報告書のみがレモンフロストを評価する為の根拠であり、ブリーダーによる多くの試行結果は、このモルフを肯定ありき、若しくは否定ありきの「憶測」に過ぎないと十分に理解する必要があります。

又、今回は紹介しなかったいくつかのアカデミックな意見の中には「故意に色素細胞腫を発生させられる珍しい特性を活かして研究に利用したい。」という物もあり、色素細胞腫の研究材料としての価値も見出されつつあります。


現在、日本国内においてレオパードゲッコーは愛護対象の動物です。

どんな事情を抱えた子であっても、自己が飼養する愛護動物が疾病にかかり、又は負傷した際には適切な処置を行う事が、動物愛護管理法にて義務付けられています。

レモンフロストに対する根本的な治療法は未だ明らかにならず、処置の全ては対処療法になります。

科学的な根拠に基づいた繁殖に否定的な意見が出される中で、肯定的なエビデンスは存在しない状態にあり、試行を行ったブリーダーは後悔の経験談を綴り、動愛法の観点からも付随する障害を理解した上で故意に産み出す行為には疑問が残る状態と言えるでしょう。

このモルフは冷静に根絶が目指されるべきであると考えますが、既に存在している個体については大切に飼育される必要があります。

批判を受けるべき者が居るとすれば、それはレモンフロストや個人の飼育者ではなく、無作為に繁殖を行い販売を続ける一部の業者です。


私たちが彼らと生活を共にするに辺り、命であるということを忘れてはいけないと常に思います。 

非常にコレクション性が高く、カラーバリエーションが豊富なレオパにおいて、いかに多くの種類を所有し、どれだけ多くの知識を持つことが一種のステータスとなっている現実があります。

「大量の知識を持っていても、有事の際に病院の一つにもいけない倫理観で彼らと向き合う飼育者」 

「初めての飼育で何も知らないが、少し気になる事があればすぐに病院に連れて行ける飼育者」 

レオパに必要とされるのは後者の飼育者であるはずです。

何事も経験を第一とする考え方を否定するつもりはありませんが、私達が趣味としているモノは「命ある動物」です。

本当の意味で経験を大事にするのであれば、ほんの少し立ち止まって、同じ趣味を楽しむ先人たちの経験談にも耳を傾ける必要があると考えます。